日本で初めて“シワの改善効果”を認められたPOLAのリンクルショット メディカルセラム。
百貨店のブースにおいて、サンプルが絞り尽くされている光景をよく目にする大人気商品です。
そんなリンクルショットがどのようにして生まれたのか。
今回はその誕生秘話を中心にまとめました。
会社概要
会社名:株式会社ポーラ(POLA)
創業:1929年
売上:150,183百万円(2018年12月期)
グループ会社:オルビス株式会社。Jurligueグループ。株式会社ACRO(THREEを手掛ける)など。
今回登場する商品について
1.リンクルショット メディカルセラム
【医薬部外品】有効成分:ニールワン(シワを改善する効果※)
【容量】20g
【料金】14,850(税込)
販売個数197万個。売上金額260億円。(2017年1月の発売以来2019年6月集計実績)
※日本香粧品学会で定められた効能評価試験済み。
12週間で7割の方の目尻のシワが改善。シワの深さは最大34%改善。
2.リンクルショット ジオ セラム
【医薬部外品】有効成分:グリチルリチン酸2K(抗炎症作用)
【容量】40g
【料金】11,000(税込)
2020年1月1日発売。
将来のシワに不安を持っている方がターゲット。
3.B.Aベーシックセット
【内容】クレンジング20g、ウォッシュ20g、ローション20ml、ミルク15ml、クリーム5g
【料金】11,000円(税込)
百貨店での取り扱い無し。
15日分。旅行用やギフト用として人気。
ターゲットについて
30~40代のエイジングケアにお金をかけたい女性。
▼ターゲット層の特徴
1.美意識が高い。
2.エステに通うほどではない。
3.安価な商品では悩みが解決されない。
4.美容にお金をかけられる方々。
5.スキンケアに効果を感じたい。
逆風の中でのリンクルショット誕生
ーー化粧品の3大テーマである「シワ」、「シミ」、「毛」。「シミ」と「毛(育毛など)」については、医薬部外品として効果が認められた商品がある中、「シワ」については1つもなかった。そこで各化粧品会社は我先にと研究に力を注いでいた。
そして見事「シワ改善成分」認定の第一号を手にしたのが、POLAのリンクルショット メディカルセラムである。2002年に研究・開発をスタートし、医薬部外品の承認が下りたのが2016年7月と、実に15年がかりの悲願達成であった。
POLA 麻生氏
「シワのメカニズムの研究に始まり、5,400種類の成分を一つひとつ検証することで、ニールワン(※1)がシワに有効であることが突き止めました」
「ニールワンは水に溶けると分解され、効果が3年間持続しないという問題(※2)がありましたが、水を含まないクリームタイプのアイテムとすることでなんとかこの問題はクリアします
この開発期間だけで実に7年の月日が経っています」
「しかし2012年に白斑問題(※3)が起き、POLAにとっても化粧品業界に取っても強い逆風が吹きつけました。結果、申請期間は8年間に及び、非常につらい時期が長く続くことになります」
※1ニールワンの由来
<名称の由来>ニールワン(NEI-L1): Neutrophil(好中球)、Elastase(エラスターゼ)、Inhibitor(阻害剤)、License(ライセンス)、1(第一号)
※2医薬部外品の条件とニールワンの弱点
医薬部外品の認定を得るためには、3年以上の効果の持続が必要である。
水の浸透力によって肌に成分を浸透させる(角層まで)化粧品にとって、ニールワンは致命的な欠点を抱えた成分であった。
※3白斑問題とは
厚生労働省が安全性を認めた化粧品において、肌に白斑ができたと全国の人々が訴え、化粧品業界全体を揺るがした問題。
この事件により厚生労働省の審査基準は厳しくならざるを得ず、審査再開にも2年の月日が必要となった。
「申請後にやり取りをする専門家協議の団体(PMDA)からは、通常の医薬部外品のチェック項目が20くらいのところ、リンクルショットは60項目と、非常に厳しい審査を受けたり…」
「また『それだけ効果があるならば医薬品にすればいい』という声もありましたが、医薬品の販売は医師でなければできませんし、店舗や訪問販売を主力としていたPOLAとしては、医薬部外品として発売するというところは譲れませんでした」
「その諦めない気持ちが実り、2016年7月についに承認をいただくことができました」
ーーこの審査の際、140人の被験者に1年間リンクルショットを使用し、異常がないかを調べるなど、実に1億円の予算をかけて対策を行ったという。
ポーラが突き止めたシワのメカニズム
ーーシワができるメカニズムを明らかにしたのはPOLAが世界初であり、リンクルショットはその理論に支えられている。それは一体どんな理論なのか。麻生氏は「シワ=キズ」として体が勘違いしてしまうことがキーになると語る。
「シワは以下の流れにそって進行していきます」
▼シワ進行のステップ
①真皮の柔軟性が低下
②笑ったりした時に表情圧が大きくなる → 表情ジワができる
③表情圧を受けた部位に好中球が出現
④好中球エラスターゼにより真皮の過剰分解が進む → 勘違いキズとしてシワが定着する。
「シワの原因が、『紫外線や表情圧などの小さな刺激が蓄積してできる』ということまでは研究前から分かっていたのですが、シワとして定着する根本的な原因は誰も分かっていませんでした。そこでPOLAが着目したのが『好中球』でした」
「好中球とは免疫を担う白血球の一種で、ケガをしてウイルスが入り込んだ部位や、紫外線でダメージを受けた部位に集まる習性があります」
「そして好中球は『好中球エラスターゼ』(酵素)を放出し、ウイルスを退治したりダメージを受けた真皮成分を分解する働きを持っています」
「しかし表情圧のように無害な刺激に対しても、好中球はキズだと勘違いしてしまい、好中球エラスターゼを分泌していることを発見しました。この好中球エラスターゼにより健康な真皮が過剰に分解され、シワとなっていたのです」
POLAの自信
「そんな好中球エラスターゼの暴走を食い止める有効成分がニールワンです。ニールワンは好中球エラスターゼと合体することで、真皮成分の分解を抑制することができます。これによってシワの進行を抑え、保湿などのスキンケアをさらに活かすことができるのです」
ーーこの画期的な商品が登場したことで他社にも追随する商品が多数登場し、スポットケア市場は急伸している。
後発商品に比べて未だに高価なリンクルショットだが、その強気の姿勢も、POLAの自信の表れなのだろう。
そんなリンクルショットから新商品が登場
ーーリンクルショットはできてしまったシワにアプローチするものだが、その一歩手前である、将来のシワへの不安にアプローチする商品が登場する。
「リンクルショット ジオ セラム」だ。
「表情を動かすと部分的に大きな表情厚が生じ、一時的にシワができますよね。
ジオセラムは、そのシワも嫌だというニーズにお応えする商品です。
そして『笑うとシワができる』という常識の打破を目標としています」
「また『リンクルショット メディカルセラム』の発売後2年間はECサイトでの販売をしていませんでしたが、ジオセラムについては、店舗だけでなく早速ECサイトからも販売を開始いたします。海外でも順次販売予定です」
POLA最高峰ブランドのB.Aシリーズについて
ーー基本的に高価なアイテムが揃うPOLA商品の中でも、頭一つ抜けた価格を誇るのがB.Aシリーズだ。
最も高価なB.Aグランラグゼはなんと79,200円(税込)と度肝を抜かれるが、POLAが理想とするのはリンクルショットとの相乗効果である。
「こちらは新規のお客様というよりはリピーターの方が多いのですが、リンクルショットと合わせてご使用いただくことを考えて作っておりますので、2つが合わさった時が最も理想的なスキンケアとなります」
ーーただ、B.Aシリーズは気軽にできるものではないだろう。そこでB.Aシリーズにもお試しプランが存在する。
B.Aベーシックセットである。
「B.Aベーシックセットは洗顔からクリームまでの5種類をまとめたラインナップです。約15日分となっておりますので、まずはこちらでB.Aシリーズの良さを体感いただければなと思います」
薬機法への注意とオススメの訴求方法
ーーシワ改善の効果が認められているとはいえ、薬機法に敏感な商品であるのは間違いない。
「効果の強さを示そうと、どうしてもビフォーアフターの写真を使用したくなるとは思いますが、それは薬機法違反となってしまいますので、ご注意ください」
ーーまた今回取り上げた商品は、いずれも冬の時期と相性がいいのだという。
「エイジングケア商品はもったりとした使用感から、夏場よりもこれからの冬のシーズンに購入者が増えるという傾向があります。
それにこれからの時期はクリスマスコフレ(11月1日発売)の販売もしており、例年獲得が伸びますので、ぜひお取り組みいただきたいなと思います」
ーー薬機法に不安がある方はこちらをご参照ください。
1.【薬機法】化粧品と健康食品の商品レビューで注意すべきこと
編集後記
逆風の中でも諦めない気持ちを15年間捨てずに戦った結果、POLAに莫大な利益を生み出し、消費者の悩みに届いたリンクルショット。
使用期間の目安は2部位に使用して2か月の計算で、効果の実感のためには4か月の継続をしてほしいとのこと。
高価な商品であり、継続がしんどいとも思ってしまうが、彼らの精神をリスペクトし、シワの悩みに諦めずに立ち向かっていきたい。
そう思わせられるセミナーでした。